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それだけじゃないの

(円田とゆうた)





 顔は好きだ。ほかに好きなところを挙げろと言われても真っ先に思い浮かぶのは顔で、次も顔だ。あと身長と、物腰やわらかなところとか。あと一緒に歩いていると女の子がズルズル釣れる、というか吸える。女の子バキューム。というとちょっと気持ち悪いか。いやでも、気持ち悪いほどに吸える。まじで。
 ゆうた目当ての女の子でも、そのうちのひとにぎりは声をかければフラフラとこっちに来るからチョロイ。少し時間を置くと、自分に振り向いてもらえないとわかった残りのいくらかもこっちに来るからさらにチョロイ。当の本人は吸い込んだ自覚もなく、オロオロとしたりホッとしたり、かと思うと俺を諌めたりと変なところで忙しいから面白い。
 女の子の相手をするのは、楽だ。男とくだけた話をするのも好きだし、女の子としょうもないことで笑うもの楽しい。機嫌を損ねないように下手に出たり、付き合う前にあれこれ我慢するのは面倒でも、モノにしちまえばこっちのもん。そこからは俺がどんな態度に出ようと、そんな俺を選んだ相手も悪い、と胸を張って言える。
 最初のうちはとても楽しい。多少浮かれもする。ちやほやするのも面白い。が、時間が経つとあれこれ面倒になってくる。ご機嫌取りはもうたくさん、会いに行くのも面倒臭い。相手の気持ちになって考えてごらん、という人間は人生の半分は損してる気がする。せっかく一人の人間として生まれてきたんなら、自分本位に考えたほうが自分のためじゃないか。最低限度のところは弁えてるけどさ。

「円田はひどいよ! いやほんと最低野郎」

 罵りと共に泣きそうな顔がこちらを見た。ゆうたくんカワイイ~、なんて黄色い声が遠くから聞こえるが、目の前のこいつはちっともそんなの聞こえてないんだろう。俺の過去の恋愛話に対する怒りや呆れでよその声に耳を傾けている余裕なんてないに違いない。

「どこが最低だよ。俺が最低ならあっちも最低だって」

「うわそれ前聞いた! デジャヴ!」

「いや、やっぱさ。かわいいだけじゃどうにもならないってことに気づいたら無理だって」

「顔で選んどいてその言い草……円田最低」

 そのお前の周りには顔で選んでいる奴らが溢れてるんだよ、と言ってやろうかと思ったけど、言ったところできょとんとされるだけなんだろうな。自分の顔が武器になるって、周囲から言われて何度も説かれて、半信半疑で首を縦に振るような奴だから。そういうところが嫌いかと言われると、そうではない。なんだかんだ、こういう優柔不断なところだったり、ヒイヒイなっているところを見るのが嫌いじゃない。
 顔は好きだ。顔は好きだが、顔だけが好きなのかと聞かれるとそうじゃない。顔以外にも気に入っているところはたくさんある。ただそれを真面目に上げ連ねていく自分を想像するとキモいから言わないだけで。
 まあつまり、

「俺は顔だけで選んだわけじゃないからな」

「……は!? さっきかわいかったからって言ったじゃん!」

「そっちじゃねーよ」


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