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スイート

(宇野とゆうた)




 自分より身長が高いからどうしても見上げる形になってしまって、別に顔が見たいわけではないし目も合わせたくはないけど反射で顔を上げてしまって、全てのパーツが整ったアノヒトの後頭部が視界に入ってなぜかほっとする。いつもこちらを見ていると思えば、こちらが見るタイミングで見られてなかったりしてほっとする。向こうが見ていないからこちらも気にせず下を向くと、いつの間にかこっちを見ておろおろしている。嫌いというか、いや、好きか嫌いかの二択だったら確実に嫌いだけど、そんな本当に嫌悪感丸出しで嫌いってわけではないから顔を見ないわけではない、ただ人の顔をじっと見て話すのが苦手なだけだから、そんな風におろおろされても困る。と言おうとしても、どう言葉にしたらいいのかわからなくて結局、何も言えていない。単刀直入に言おうとしたことも何回かあったけど、尽くチャンスを潰されて、言う気も削げて、今に至った。この人は格好だけはものすごくいいのに、なぜこんなしょうもない奴にわざわざ声をかけるんだろう。たまに気持ち悪い。頼んでもないのにお菓子とかくれるし。喧嘩を売ってるのかと思うようなタイミングと言葉で攻めてくるし。

「ゆうたくん」

 言いながら顔を上げると、ばっちり開いた目と目が合った。人の顔はそれぞれ違って当たり前だけど、違いすぎるのもどうかなと思う。なんでこの人は、顔もよくて背も高くてたぶん性格も良いのに、俺には何もないんだろう。相変わらずアバラは浮き出ている。円田にもからかわれる。女子との絡みなんか一切ない。こういうのは、比べてしまうととたんに不公平に感じられるから、嫌だ。そういうのを感じたくないから、そもそも比べないようにしているのに、何かとこの人が近づいてくるから嫌でも対比してしまう。わざとかもしれない。こんな、無害そうな顔をして実は、性根は円田よりも腐っているのかもしれない。

「どうしたの?」

「…………いや、なんでも」

 意地の悪い笑みの円田が頭に浮かんだと同時に、見た目もにおいも甘ったるくて口にしたら案の定甘かったお菓子のことを思い出す。甘すぎるものは、やっぱりだめだ。気持ち悪くて。


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